昨年のハロウィンの翌日の深夜、マライア・キャリーはロサンゼルスのベルエア地区にある著名音楽プロデューサーのアントニオ・LA・リードの豪邸を訪れていた。その日、彼女は翌年のリリースを控えたニューアルバムの音源を、20年来の友人で相談役でもあるリードに聴かせて、意見を求めていたのだった。そして、その場には設立2年の音楽スタートアップ「Gamma(ガンマ)」のCEOであるラリー・ジャクソン(44)も同席していた。
キャリーが待望の16枚目のアルバムからの曲を再生した瞬間に、ジャクソンは圧倒されてしまったという。「一体なぜ自分は今ここにいるんだ?」と思ったと彼は振り返る。だが、キャリーは彼にこう告げた。「私は、あなたがやってきたことを知っている。だからあなたが私を新しい高みに連れていける人だと思っているの」

キャリーは、ニューシングル『Type Dangerous』のリリースとともに究極のチャレンジが始まった。目標の1つは自身にとって20曲目の全米ナンバーワンヒットを獲得しビートルズに並ぶことであり、もう1つが21曲目も生み出すことだ。これは、レブロン・ジェームズがカリーム・アブドゥル・ジャバーが持つNBA通算得点記録を破ることに相当する音楽界の偉業だ。そこでキャリーはジャクソンが立ち上げた音楽メディア企業のガンマをリリース元に選んだ。
「私が思うに、ラリーは自分の人気を過小評価しているかもしれない。マライア・キャリーはラリー・ジャクソンのことをちゃんと知っているよ」とリードはフォーブスに語った。
Apple Musicの立役者の1人でもあるジャクソンは、11歳でサンフランシスコのラジオ局KMELでインターンとして業界に入り、16歳で音楽ディレクターになった。「今では考えられないことですね」とジャクソンはその仕事を振り返る。「しかし、当時はまだ規制がそれほど厳しくない時代でした」