起業家

2025.06.09 15:30

シン起業家たち「NEXT 100」 クリエイターの創造力が社会・経済を変える

新しい起業家たちの存在に注目してきた「NEXT 100」特集企画。2025年は社会の流れを変え、新循環を生み出している「クリエイター」にフォーカスした。


インターネットの発展やSNSの浸透によって2020年代初頭から拡大してきた「クリエイターエコノミー」。いち消費者が趣味の領域を超えて自身のスキルや情熱を外部に発信・提供する「個人クリエイター」を中心とした経済圏だ。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査(24年12月発表)によると、23年の国内クリエイターエコノミーの市場規模は1兆8696億円。調査が始まった21年に比べると年平均17.4%で成長している。

成長の要因としては、クリエイター(供給者)やユーザー(消費者)だけでなく、クリエイター関連のプラットフォームや支援サービス、さらには政府の政策をはじめとする外部環境などの多様な動向が複合的に市場拡大に寄与したことが挙げられる。クリエイティブ制作や流通が民主化され「誰もがクリエイターになれる時代」とされる現代において、個人クリエイターの存在感はますます大きくなっているのだ。

コンテンツ輸出、2033年に20兆円へ

同調査でも今年のトレンドのひとつとして「海外展開」が挙げられているが、個人制作・プロ制作合わせてクリエイティブは今や重要な日本の産業である。経済産業省によると、日本のコンテンツ産業の海外売上額は15年ごろから急増し、コロナ禍の“巣ごもり需要”も追い風となって23年に5兆8000億円を達成。半導体産業や鉄鋼産業を抜き、自動車に次ぐ第2位に躍り出た。その理由として同省は、「以前より世界的な評価が高いアニメ、ゲーム、マンガのみならず、映画や音楽といった分野においても、世界的な評価を得る作品やクリエイターも出てきている」(エンタメ・クリエイティブ産業戦略 事務局資料)としている。

同資料によると、世界のコンテンツ市場は27年に163兆円まで成長するとの予測もある。そんななか政府は、コンテンツ産業を日本の基幹産業に定め、グローバル市場を狙うことで33年に20兆円まで伸ばす目標を定めている。24年6月には内閣府が「新たなクールジャパン戦略」を策定。同年7月には経産省に文化創造産業課を新設し、コンテンツ産業全体の振興政策と、クールジャパン戦略に基づく同産業の海外展開・発信を一気通貫で実施する体制を構築した。

特に今年、海外を視野に入れた大きな動きがあるのが音楽業界だ。23年末に業界の主要5団体が垣根を越えて連携し、一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会(CEIPA)を設立。25年2月にはCEIPAとTOYOTA GROUPが、本質的な日本音楽産業のグローバル化、持続的な成長支援・推進する共創プロジェクトとして「MUSIC WAY PROJECT」を始動した。本プロジェクトでは、3月に米国で日本人アーティストが出演するグローバルショーケースを実施したほか、5月には国内最大級の国際音楽祭「MUSIC AWARDS JAPAN」(MAJ)を京都で開催する。

本特集「NEXT 100」では、こうした未来のコンテンツ市場をけん引していくだろうアントレプレナーシップをもったクリエイターたちに注目する。その創造力は日本経済を支えるとともに、社会の流れを変え、新しい循環を生み出してく。

次ページ > 「シビック・クリエイティブ」の流れも

文=田中友梨、中山淳雄(3P)、川村真司(4P) イラストレーション=アンドリュー・ジョイス

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事