働き方

2025.05.29 07:15

熱中症対策義務化が目前、知らない企業3割の現実と対策

Getty Images

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2025年6月1日、改正労働安全衛生規則の施行にともない、職場における熱中症対策が義務化される。しかしその認知度には業種によってばらつきがあり、よく知らない企業も少なくないが、すでに対応している企業はどんな具体策を施しているのだろうか。

厚生労働省のパンフレット『職場における熱中症対策の強化について』には、WBGT(暑さ指数)28以上または気温31度以上の環境下で連続1時間以上または1日4時間を超えて実施されることが見込まれる作業に対して、「体制整備」、「手順作成」、「関係者への周知」が義務づけられると書かれている。つまり、熱中症予防のための対策を講じ、作業者に熱中症の症状が表れたときの対応の手順を定め、これらを関係者の間で共有しなさいということだ。

帝国データバンクは、全国の企業1568社を対象に、熱中症に関する認知や対策についてアンケート調査を行った。まず熱中症対策の義務化を知っているかとの質問では、「詳しく知っている」と答えた企業は2割に満たず、「なんとなく知っている」が約4割。「知らない」が3割弱となった。業種別に見ると、熱中症のリスクが高い建設業では認知度は8割近くあるものの、不動産や小売り業は4割前後に留まった。

しかし、ほぼすべての企業は何らかの熱中症対策を行っていることもわかった。もっとも多い対策はクールビズの実践だ。これに、扇風機やサーキュレーターの活用、水分・塩分補給品の支給、ファン付きウェアやサングラスの活用などと続く。ただ、このなかで義務化の措置に該当する「熱中症に関する報告体制の構築」、「搬送先など緊急連絡先の周知」は1割台、「職場巡視やバディ制、ウェアラブル機器などによる熱中症の把握」は1割に達していない。命にかかわることなので、ぜひとも対策を急いでほしい。

各企業からは個別の対策に関する情報も寄せられたので、いくつか紹介しておこう。
・現場設置の自動販売機を外気温25度以上の場合、1日に2回に分けて無償配布している。(大工工事)
・現場では元請けに時差出勤や休憩時間の延長をお願いしている。(鉄筋工事)
・6月から9月まで熱中症対策手当を支給する。(一般電気工事)
・7~9月の外出をともなう営業活動を自粛している。昨年はWEB打ち合わせでなんとかなった。(卸売)
・リモートワークの強化を積極的に推進することでリスクを抑える。(広告関連)
・数年前よりノーネクタイを社内標準とし、2025年度より社員制服を廃止した。(教育サービス)
・熱中症対策マニュアルを作成し、高温・多湿の現場では定期的な休憩と水分補給を指示。熱中症になった場合は担当者より報告し、近隣の病院を受診することを規則化している。(メンテナンス・警備・検査)

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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