米国のアルコール業界が後援する広告は飲酒運転と戦うためにデザインされているが、安全対策への効果をかえって弱めている。マスメディアを活用したこれらの飲酒運転防止キャンペーンは社会的責任を果たしているように見えるが、実際には公衆衛生を最優先にしておらず、「アルコールに対する好意的な認識を形成しながら、被害を減らす効果はほとんどない」マーケティング手段として機能していると指摘されている。
これらは、グローバルな非営利公衆衛生組織であるヴァイタル・ストラテジーズが2025年4月初めに発表した新たな分析によるものだ。
ヴァイタル・ストラテジーズの政策アドボカシー・コミュニケーション担当シニア・バイスプレジデントであるサンドラ・マリンは声明で次のように述べている。「アルコール業界は利益を優先し、公衆衛生は人間を優先します。道路上の命を真に守るためには、政府はアルコール業界を安全キャンペーンの企画から排除しなければなりません。代わりに、公衆衛生主導による実証済みのコミュニケーション戦略に投資して、人々の意識を高め、社会規範を変え、安全な行動を促す必要があります。適切に実施された独立した飲酒運転防止キャンペーンは、交通事故を13%減らし、命を救うことができるのです」。
今回の研究は『How the Alcohol Industry Steers Governments Away From Effective Strategies to Curb Drink Driving: Insights from Advertising Research』(アルコール業界はいかにして飲酒運転を抑制する効果的な戦略から政府を遠ざけているか──広告研究からの考察)というタイトルで発表された。毎年2000万から5000万件の交通事故による負傷のうち、飲酒運転が主要なリスク要因となるものは27%に及ぶと指摘している。
分析では、2006年から2022年にかけて14か国で放映された、業界が支援する飲酒運転防止動画広告32本を研究者らが調査した。その結果として示された主なポイントは以下のとおりだ。
・広告の61%でアルコール消費が魅力的に描かれ、祝賀や社会的交流、社会的・経済的地位の誇示などの状況と結び付けられていた。
・俳優、ミュージシャン、レーシングドライバー、プロスポーツ選手などの著名人が広告の約半数(49%)に登場していた。
・広告の大半(56%)は、飲酒運転による結果を具体的に示していなかった。
・いずれの広告にも、飲酒運転の結果を明確に伝える表現や負の感情を喚起するトーンは用いられていなかった。